2012.10.8
三代目奮闘記
第67回『コマ大戦連覇へ』
コマ大戦連覇へ 2012_10_08
9月30日、八王子で過去最大のコマ大戦となる全日本製造業コマ大戦関東大会が行われた。参加は何と64チーム。2月の第1回全国大会の3倍を超すチームにより、予想をはるかに超える戦いが繰り広げられた。
簡単にコマ大戦の経緯を振り返る。2011年6月。由紀精密がパリの航空展(パリエアショー2011)に出展した際に、精密機械加工のサンプルとして作成した直径1センチメートルのSEIMITSU COMAが、製造業経営者グループの心技隊を率いるミナロの緑川賢司代表取締役の目にとまる。これは面白いということで、心技隊が企画・運営し12年2月にパシフィコ横浜で第1回全日本製造業コマ大戦が行われた。
この大会は大きな反響を呼び、全国各地から開催要望が集まった。これまでに茨城場所と信州長野場所、渋谷場所、仙台場所、そして八王子場所と5回の地方選(全国大会の予選とエキシビション含む)が行われた。過去最多の参加者を集めた八王子場所は、HFA(八王子・フューチャー・アソシエーション)という、経営者の自主運営団体が運営。今後も、来年2月に開催される第2回全国大会に向け、各地で予選が行われる予定だ。
由紀精密は第1回大会の優勝者として来年の全国大会に臨む。第1回大会の準備段階で、その時点では必勝理論と思えた設計手法で、レギュレーションに合わせてコマを作っていた。同様の理論を元に設計していた数チームのコマと僅差の戦いにはなったが、その理論を証明する形で優勝できた。
しかし、この理論を覆す戦い方があることが過去の地方選から見えてきた。実際、別の設計思想で試作したコマが、第1回全国大会出場のコマすべてに勝ってしまうことが分かった。コマ大戦のルールは優勝者が参加者のコマ総取りだ。このため、第1回大会のコマはすべて由紀精密にあるのだ。
その分、優勝者が有利になる。大会を重ねるごとにレベルがアップし、最新の大会での優勝者の元には最新の情報が集まる。八王子場所の勝者、大田区の安久工機の作ってきたコマは、コマの内部にジャイロを仕込んだものであった。こういう仕組みも過去に考えられたものの、直径2センチメートルのコマの中に実戦レベルで組み込んで仕上げてくることは非常に困難と思われていた。今後、機構を組み込んだコマも出てくるようになるだろう。
由紀精密が連覇するためには、さまざまな設計思想で作られたすべてのコマに勝つ必要がある。何度かまとまりかけた戦略もまた振り出しに戻る。非常に奥が深く、純粋に楽しい。コマ大戦が中小製造業にもたらした興奮は計り知れない。
(日刊工業新聞 10月8日付オピニオン面に掲載)