2012.12.24
三代目奮闘記
第75回『航空宇宙品質規格』
航空宇宙品質規格 2012_12_24
「ISO」−。製造業でなくても、最近よく聞く言葉である。ISOとはInternational Organization for Standardization(国際標準化機構)の略で、世界で統一した工業規格を作ることを目的とした組織で、よく目にするのは、ISO9001という品質マネジメントシステムに関する規格と、ISO14001という環境マネジメントに関するものであろう。こちらの認証を持っていないと、大企業のサプライヤーとして登録してもらえない場合もある。
由紀精密は2008年にISO9001の認証を取得した。それまでは特定の顧客との取引が大半を占めていたので、しっかり品質管理をしていることを第三者から証明してもらう必要がなかった。しかし当時の由紀精密にとって新規顧客拡大が生き残りの必須条件だったため、認証取得は必然だった。
新しい顧客との取引を始める際には、どのように品質を保証しているか、どのようなやり方で製造を行っているかを徹底的に調査される。調査されるならまだよい。その手間も省くために、あらかじめISO9001を持っていることが取引の前提条件になっていることもある。
実際に認証を取得するため品質マニュアルなどの整備を始めると、もともとの顧客要求として対応しておかなければならなかったことが多かった。 品質をしっかりと管理することは実は最終的には効率が良い。さまざまな会社からさまざまな様式で品質管理を求められると、余計な手間がかかる。だが、世界標準のやり方で生産していれば、大半の部分はあらゆる顧客要求を満たすことになる。
由紀精密は航空宇宙分野の割合を増やしていきたいという狙いもあり、すぐに次のターゲットをJISQ9100(航空宇宙防衛品質マネジメント規格)に設定した。JISというと日本国内の規格のようだが、米国の「AS9100」、欧州の「EN9100」と、9100は世界的に共通の規格になっている。 実際に海外の展示会ではこの規格を持っていることが飛行機の部品を作れることの証明として認知され、商談がスムーズに進むことが多い。由紀精密は10年にこの認証を取得し、同規格の3年目の定期審査をちょうど終えたところだ。
規格通りに正しく運用している、という認識でいるが、審査されるとなると非常に緊張する。ただ、この緊張感が社内を正し、自分たちのやっていることをあらためて見直す機会になる。しっかりやっているから認証はいらない、と考えている会社も多いだろうが、由紀精密にとってはよい外部コンサルタントになっていると思う。
(日刊工業新聞 12月24日付オピニオン面に掲載)