2012.11.26
三代目奮闘記
第72回『小学生にモノづくり教育』
小学生にモノづくり教育 2012_11_26
130人の元気いっぱいの小学生が、茅ケ崎市円蔵にあるこの小さな工業団地の小さな会社に押し寄せた。きょうは茅ケ崎市立室田小学校、5年生全4クラスの生徒の工場見学会だ。工場見学にお客さまを受け入れることには慣れているものの、多くても10人程度が普通である。今回はそれをはるかに上回り、限られた時間内に全員に説明することは不可能だ。しかし、何とか小学生に楽しんでもらいたい。その強い思いから、今回の小学生への見学会は3部構成とすることにした。
話は1カ月前にさかのぼるが、筆者が小学校へ出向き、体育館で町工場とは何か、モノづくりは何が楽しいかなどについて、メディアで取り上げられた内容やコマ大戦の様子などを織り交ぜながら説明した。そして本日。期待に胸を膨らませてやってくる小学生をがっかりさせないように、筆者を含め同じ工業団地の4社で準備を整えた。
工場内に案内用通路を作り、両側に黄色いテープを張り巡らせる。これで迷わず工場の中を歩き回ることができる。安全面にも配慮した。説明員が足りないので、オリエンテーション風にチェックポイントを作り、そこに工作機械の説明や場所の説明を入れたパネルを置き、それを各自で読みながら進んでもらう。
この方法で小学生が順に4社を見て回り、学校側が用意したプリントに書ききれないほどのメモを取っていった。小学生はさまざまなところに興味を持つ。町工場はまさにオモチャ箱をひっくり返したような状況に見えたのかもしれない。
同じ工業団地の各社も気合を入れてこの日のために準備をしてくれた。小学生たちはお昼の給食に間に合わなくなるまで時間を大幅に超過して存分に見学して帰って行った。 お楽しみはもう一つ。先ほど3部構成と書いたが、実は今回、小学生にコマを設計してきてもらったのだ。その中でよくできているコマを各クラス一つ選んで、実際に作ろうと思う。完成品をプレゼントして各クラスでぶつけ合って勝負ができれば、設計から評価まで、ものづくりの一通りのプロセスを体験できることになる。
日本はモノづくり立国だと言われているが、小学生へのモノづくり教育がなされていないのではという疑問を前から持っていた。しかし特に改善のためのアクションを起こしてはいなかった。それが、小学校の校長先生方が集まる勉強会の講師をしたのがきっかけで、今回のイベント開催となった。日本に100万人以上いる小学5年生のうちのたった130人ではあるが、ほんの少しでもモノづくりに興味を持つ子どもが増え、将来的に日本の力になってくれると信じている。
(日刊工業新聞 11月26日付オピニオン面に掲載)