2012.4.16
三代目奮闘記
第46回『コストダウン要求』
コストダウン要求 2012_04_16
中小企業でも大企業でも、製造業でもサービス業でも、売り上げを決めるのは商品の価格。商品の価格は多くの製造業の場合、製品を作る前の見積もりで決まってくる。見積もりは売り上げを決める重要な要因でありながら、スマートなロジックを作ることはとても難しい。
部品加工で言うと、本来ならば、材料費、工作機械の金額から決まる工作機械の工賃、その機械を扱う人の時間単価、その他検査や梱包にかかる費用や消耗品費、会社を運営するための費用とわずかな利益が上乗せされて算出される。簡単なはずだ。しかし、この金額で受注が決定する製品、特に量産品は、まず”ない”と言っていい。 なぜなら、多くの優秀な会社がひしめく中、同じ方法で算出された同じような金額では、大手メーカーの購買部門の厳しい要求をまずクリアできない。
しかし、これであきらめてはいけない。利益を無視して仕事欲しさにただ金額を下げることはもっといけない。 ここから先が腕の見せ所だ。どうやったら半分の工数で作れるだろう? 図面を少し変更するだけで加工工程が一つ減らせるのでは? 一方、現在多くの製造業の悩みとして、過去の見積もり条件から大きく外れているのに同じ値段を要求される例が多く見られる。同じお客さまからの他の製品で、ある程度利益が出ていれば、それでいいという考えもあるかもしれないが、これは一時的なもので、利益が出る製品が止まってしまったら赤字の仕事だけ残る。
それでは、そういう仕事はすべて断るか?もちろんそういうわけにはいかない。ただ、この事実と向き合い、しっかりと過去の見積もり条件との違い、現在かかっている原価、新たに見積もる場合の単価を分析して、極力お客さまと対話していく。深く踏み込んで検討することで、実は両者にとって有効な新たな方法を見つけられる可能性もある。
例えば、発注ロット数を下げないで、単価を割引する。発注側にとってはコストダウンが図れるし、受注側にとっては、小ロットに細切れにされた注文をさばくよりもはるかに楽になる。または、割引の条件としてある程度の納期を確保してもらう。それによって、効率の良いタイミングで生産できるので、無駄なコストを省ける。
世間の流れとして小ロット短納期というのは避けられず、それに対応できることはメリットでもあるが、必要がないものまでそうなって、全体の効率を落としている気もする。やはり、個別の製品について深く考え、お客さまに説明し、両者で知恵を出し合うことが重要であろう。
(日刊工業新聞 4月16日付オピニオン面に掲載)